設備保全とは?目的や仕事内容、課題などの基礎知識
設備保全は、製造現場における機械や設備の安定稼働を維持するために重要視されています。昨今では、コスト削減や安全性の確保、さらにはIoTやAIなどの最新技術を活用した生産性向上を目的に、製造業やビル管理、インフラ産業など幅広い業種で設備保全の重要性が高まっています。
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設備保全とは
設備保全とは
設備保全とは、工場・プラント・ビルなどの施設が持つ機械や生産設備が、その機能を最大限に発揮し、常に正常に稼働し続けられる状態を維持するための、計画的かつ体系的な全ての活動を指します。
具体的には、機械が日々の生産活動を無事に終えられるように見守る日常点検(運転状況の確認、異音や異臭のチェックなど)や、定期的に行われる部品交換、清掃、給油、小さな不具合の修理といった活動が挙げられます。
さらに、設備の劣化状態を技術的に診断し、将来の故障を予測するような活動も設備保全の一環です。こうした一連の取り組みによって、設備全体の安定稼働を実現します。
設備保全の主な目的
設備保全の主な目的
設備保全が担う重要な目的は、設備の突発的な停止(ダウンタイム)を未然に防ぎ、生産性を維持・向上させることです。設備が予期せず停止すれば、生産計画の遅延、納期の遅れ、そして大きな機会損失に直結するでしょう。そのため、安定稼働の確保は、あらゆる目的の基盤となります。この基盤の上に、さらに重要な目的がいくつか存在します。
まず1つは、設備の不具合や老朽化による事故を防ぎ、従業員が安全に働ける職場環境を維持する「安全性の確保」です。次に、設備の性能を常に最適な状態に保つことで、製品やサービスの品質を一定に保ち、不良品の発生を抑制する「品質の維持・向上」も挙げられます。さらに、計画的なメンテナンスによって設備の寿命を延ばし(長寿命化)、突発的な高額修理や設備全体の買い替えといった支出を抑える「コストの最適化」も、設備保全の重要な役割です。
まとめると、「生産性」「安全性」「品質」「コスト」の全てを高いレベルで実現し、守り続けることが、企業経営の安定化に不可欠な設備保全の主な目的といえます。
設備保全とメンテナンスの違い
設備保全とメンテナンスの違い
「設備保全」と「メンテナンス」は、ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。どちらも設備の点検、修理、調整などを行い、正常な状態を保つための活動を指しますが、厳密には違いがあります。
「設備保全」は、「故障を未然に防ぐ」という予防的な視点を強く含んだ、広範で計画的な活動全体を指す言葉です。将来の故障を予測する取り組みや、設備の性能を改善する活動(改良保全)なども含め、設備という資産の価値を「全てにわたって保つ」という包括的な概念として使われます。
一方「メンテナンス」(または「保守」)は、設備が故障した際に修理する「事後対応」や、定期的な部品交換などの「決められた作業」といった、個別の作業を指す傾向があります。
設備保全の3つの種類の比較
設備保全の3つの種類の比較
設備保全は、主に「事後保全」「予防保全」「予知保全(予兆保全)」の3つに分類されます。
図1 (設備保全の種類)
事後保全
事後保全とは、設備が故障した、または著しく性能が低下したときに、修理や部品交換を行う保全方式を指します。設備が機能を停止した時点から、故障箇所の特定、部品の手配、そして交換・修理を行うという、事後対応の活動です。
身近な例でいえば「電球が切れてから交換する」といったように、不具合が顕在化するまでは、あえて特段の措置を行わないのが特徴といえます。
予防保全
予防保全とは、設備の現在の状態にかかわらず、あらかじめ決められた保全計画(期間や稼働時間)に従って、定期的に点検や部品交換を行う方式のことです。「時間基準保全(TBM)」とも呼ばれます。
具体的には、メーカーが推奨するメンテナンス期間や過去の故障データ、あるいは法律で定められた点検周期などにもとづき、計画的に実施されます。
この方式の特徴は、たとえ部品がまだ使える状態でも、ルールとして定めた時期が来れば新品に交換する点です。このように、強制的に設備の状態をリセットすることで、故障を未然に防ぐ効果が期待できます。
予知保全(予兆保全)
予知保全とは、IoTセンサーや監視システムを用いて設備の振動や温度、電流値などを常時モニタリングし、数値の変動から不調の兆候(予兆)を検知したタイミングで保全を行う方法です。「状態基準保全(CBM)」の一種に分類されます。
決められたスケジュール(時間)ではなく、実際の設備のコンディション(状態)を基準に行動を起こす点が、予知保全の特徴です。人間には気付きにくい微細な異音や発熱などの変化をデータとして捉え、「今は動いているが、もうすぐ壊れそうだ」という最適なタイミングを分析してメンテナンスを実施します。そのため、設備の稼働率を高く維持できる保全方法として、近年注目されています。
図2 (事後保全・予防保全・予知保全の違い)
「事後保全」と「予防保全」それぞれのメリット・デメリット
「事後保全」と「予防保全」それぞれのメリット・デメリット
これまでの設備保全は、事後保全と予防保全が主流でした。事後保全には、管理コストと手間の少なさといったメリットがある一方で、突発的な故障による停止期間の発生といったデメリットもあります。また、予防保全には計画的な整備運用が可能になるものの、過剰保全(オーバーメンテナンス)によるコストが高くなるといったデメリットもあります。
事後保全のメリット
事後保全のメリットは、管理コストと運用の手間を最小限に抑えられる点にあります。日常的な点検や状態監視を行わないため、人件費やセンサーなどのシステム導入費といったコストが発生しません。
また、部品や設備が完全に壊れるまで使い切れるため、部品の寿命を最大限に生かすことができ、交換頻度も最小限に抑えられます。
そのため、万が一故障しても生産全体への影響が軽微な設備や、安価ですぐに交換可能な機器であれば、経済合理性が高い手法といえるでしょう。
事後保全のデメリット
事後保全の大きなデメリットは、突発的な故障による生産停止のリスクが高いことです。いつ壊れるか予測できないため、もし生産のピーク時に故障してしまうと、ラインストップによる納期の遅延や、莫大な機会損失を招く恐れがあります。
また、故障が起きてから修理の手配をするため、部品の特急調達にかかる費用や、復旧作業のための残業代など、緊急対応によるコストが割高になる傾向があります。
さらに、1つの部品の破損がほかの正常な部位まで連鎖的に損傷させ、結果として修理規模が拡大してしまうリスクも無視できません。
予防保全のメリット
予防保全のメリットは、計画的な設備運用が可能になる点です。あらかじめ決められたスケジュールで点検や交換を行うため、生産の閑散期や休日などを利用してメンテナンスを実施でき、稼働中の予期せぬトラブルを大幅に減らせます。
すると、生産計画の安定化が図れるだけでなく、突発的な修理対応に追われることが減るため、保全担当者の業務負担も平準化できます。
また、メンテナンスの時期や費用が予測できるため予算計画も立てやすく、経営的な見通しがよくなる点も大きな強みです。
予防保全のデメリット
予防保全のデメリットとしては、「過剰保全(オーバーメンテナンス)」によってコストが高くなることが挙げられます。
まだ十分に使用できる状態の部品でも、定められた時期が来れば交換するため、部品コストが余分にかさんでしまう傾向があります。また、定期的な分解・点検作業そのものに多くの人手と時間を要するため、ランニングコストが増大するという側面もあるでしょう。
さらに、頻繁に設備の分解・組み立てを行うことで、作業ミスなどの人為的な要因により、逆に不具合を誘発してしまう「いじり壊し」のリスクも少なからず存在します。
設備保全におけるIoT・AIの活用
設備保全におけるIoT・AIの活用
これまで行われてきた事後保全・予防保全に比べ、非常に効率的な設備保全といわれているのが予知保全です。この予知保全を真に実用的かつ効果的なものにするには、IoTとAIの活用が極めて重要といえます。
かつては熟練の技術者が、機械の音や振動、温度などを五感で捉え、長年の経験則にもとづいて不調を察知していました。現代の予知保全は、この「職人の勘」をデジタル技術によって代替し、さらに高精度化・自動化させたものです。
具体的には、まず対象となる設備に振動センサーや温度センサー、電流計などのIoTデバイスを取り付けます。IoTデバイスが人間の神経のように機能し、設備の稼働データを24時間365日、リアルタイムで収集・蓄積し続けます。これにより、現場に行かずとも設備の状態を数値として常に把握できる「常時監視」が可能になります。
そして、集められた膨大なデータの解析を担うのがAIです。AIは正常稼働時のデータパターンを学習し、そこからわずかでも逸脱する異常な波形やトレンドが発生すれば、故障の予兆として即座に検知します。人間では気付かないレベルの微細な変化や、複雑な相関関係にある異常も捉えられるため、故障の何日も、場合によっては何週間も前にアラートを出すことが可能です。
このように、IoTでデータを集め、AIで判断するというプロセスを経ることで、保全業務は属人的な経験への依存から脱却し、客観的なデータにもとづいた科学的な運用へと移行できるのです。
設備保全の3大課題
設備保全の3大課題
製造業やインフラ産業の現場では、設備保全の重要性が高まる一方で、解決すべき深刻な課題も浮き彫りになっています。
特に「人手不足・技術継承」「コスト高騰」「設備の老朽化」の3点は、それぞれが単独で存在しているわけではありません。これらは互いに関連し合いながら、現場の負担をより一層増大させているのです。
人手不足・技術継承
少子高齢化に伴う労働人口の減少は、保全の現場にも大きな影を落としています。なかでも特に深刻なのが、熟練技術者の退職に伴う技術継承の問題です。
これまで現場を支えてきたベテランたちは、「異音の聞き分け」や「微妙な調整のコツ」といった、高度な知見を持っていました。しかしベテランの引退とともに、これらの技術が若手社員に十分引き継がれないまま、失われつつあります。
こうした状況によって危惧されるのは、不具合の予兆を見逃してしまったり、トラブル時の復旧に時間を要したりするといった、現場全体の技術力や対応力の低下です。
コスト高騰
企業の収益を圧迫する保全コストの増加も、解決すべき大きな課題の1つです。
設備を止めないために行う予防保全では、安全策としてまだ使える部品であっても定期的に交換してしまうため、どうしても部品代や作業費がかさむ傾向があります。かといって、コストを削ろうと安易に点検を減らせば、突発的な設備故障による莫大な損失や、割高な緊急修理費用が発生してしまいます。
さらに近年では、材料費や人件費の高騰に加え、アウトソーシング費用の値上げも相まって、限られた予算のなかでいかに効率的に保全を行うかが経営上の課題となっています。
設備の老朽化
日本の製造現場では、高度経済成長期やバブル期に導入された設備が今なお現役で稼働しているケースが多く、設備の高経年化(老朽化)が急速に進んでいます。
老朽化した設備は、単に故障頻度が高くなるだけではありません。メーカーによる部品供給やサポートが、既に終了していることもあります。その結果、交換部品が手に入らないために修理が長期化したり、特注対応となって高額な費用がかかったりと、維持管理の難易度は年々上昇し続けています。
本来であれば設備を更新したいところ、予算がつかず、そのまま使い続けなければならないというジレンマを抱えている現場も多くあるでしょう。
設備保全の具体的な業務・仕事内容
設備保全の具体的な業務・仕事内容
以下は整備保全の具体的な業務・仕事内容が確認できる一覧表です。
業務 |
仕事内容 |
点検 |
機械の外観に異常がないか、異音がしていないかなどを確認する作業です。オペレーターが日々行う「日常点検」と、あらかじめ期間を決めて細部まで見る「定期点検」の2種類があります。 |
保守 |
設備の性能を維持するための調整や、消耗品の交換などを行う作業です。設備の機能低下を未然に防ぐための、定期的なケアとして実施されます。 |
運転・監視 |
設備の稼働状況を常にチェックし、制御する活動です。近年では、IoTを活用し、リアルタイムで状態を監視するケースも増えています。 |
清掃 |
劣化や腐食の原因となる汚れを取り除き、機械の性能維持を図る、保全の基本となる作業です。 |
修繕 |
故障や破損が発生した際に修理を行い、元の正常な稼働状態に復旧させる作業です。 |
改修 |
新しい機能や機器を追加し、設備の性能や能力を以前よりも向上させる活動です。 |
業務 |
仕事内容 |
点検 |
機械の外観に異常がないか、異音がしていないかなどを確認する作業です。オペレーターが日々行う「日常点検」と、あらかじめ期間を決めて細部まで見る「定期点検」の2種類があります。 |
保守 |
設備の性能を維持するための調整や、消耗品の交換などを行う作業です。設備の機能低下を未然に防ぐための、定期的なケアとして実施されます。 |
運転・監視 |
設備の稼働状況を常にチェックし、制御する活動です。近年では、IoTを活用し、リアルタイムで状態を監視するケースも増えています。 |
清掃 |
劣化や腐食の原因となる汚れを取り除き、機械の性能維持を図る、保全の基本となる作業です。 |
修繕 |
故障や破損が発生した際に修理を行い、元の正常な稼働状態に復旧させる作業です。 |
改修 |
新しい機能や機器を追加し、設備の性能や能力を以前よりも向上させる活動です。 |
設備保全のあるべき姿とは
設備保全のあるべき姿とは
理想的な設備保全を実現するには、従来の手法にとらわれることなく、最新のテクノロジーや効率化の成功事例など、多角的な視点から常に情報収集することが必要です。そうでなければ、設備の老朽化や人手不足といった課題への対応がますます難化し、現場の負担が一向に減らないという状況に陥ってしまう恐れもあります。
外部の専門的な情報を積極的に取り入れるために、ぜひ一度、展示会に訪れてみてはいかがでしょうか?
RX Japan 合同会社では、日本最大級の製造業の展示会「ものづくり ワールド」を東京で行うほか、大阪・名古屋・福岡でも開催しております。
展示会場では、製造業の最先端事例や設計開発の最前線の話題が学べる併催セミナーも開催しています。
来場だけでなく展示会への出展も受け付けております。気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
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<監修者>
福本 勲
合同会社アルファコンパス 代表CEO
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。同年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに携わり、その後、インダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」を立ち上げ・編集長などを務め、2024年に退職。
2020年にアルファコンパスを設立し、2024年に法人化、企業のデジタル化やマーケティング、プロモーション支援などを行っている。
また、複数の企業や一般社団法人のアドバイザー、フェロー、NewsPicksプロピッカーなどを務めている。
主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX: EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』、『製造業DX Next Stage: 各国/地域の動向やAIエージェントがもたらす新たな変革』(近代科学社Digital)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+IT/SeizoTrendの『第4次産業革命のビジネス実務論』がある。
その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。2024年6月より現職。
(本プロフィールは2025年11月現在のものです)
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